これからベトナムへ移住あるいは事業進出を検討している場合、同国の経済状況は気になると考えられます。近年のGDPについても、詳しい数値や世界ランキングを知っておく価値はあるでしょう。そこで今回は、最近のベトナムにおける1人あたりのGDPや世界での順位、また生活水準の現状などについてご紹介します。
ベトナムのGDP
日本貿易振興機構(ジェトロ)の発表によると、ベトナムにおける1人あたりの名目GDPは2020年時点で2,779ドルでした。また一部では、最新のGDPについて3,694ドルと伝えられています。
そもそも1人あたりのGDPとは?
1人あたりのGDPは、簡単に表現すると国内総生産(GDP)を人口で割った数字です。
「Gross(総) Domestic(国内) Product(生産)」を略したGDPは、一定期間内に国内で生産された物品に伴う付加価値の総額を指します。物品の付加価値は収益を意味し、GDPは国が獲得したトータルの収益高ともいえます。
ただGDPは、必ずしも国の生産力を適切に反映しているとは限りません。労働人口が少ない場合、個々の生産額は高くても国全体の合計額は低くなる可能性があるためです。
この点から、各国のGDPを比較するときは1人あたりの数値を用いる必要があると考えられています。
ベトナムにおける推移
世界経済に関する情報サイトを見ると、ベトナムにおける1人あたりのGDPは1990年頃から名目GDPと実質GDPのいずれも上昇傾向です。
名目GDPは、商品の値上げなど市場価格の動きを考慮に入れず計算した数値を指します。ベトナムの場合、自国通貨で1990年には789,051.56ドンでしたが2022年には93,807,820.60ドンに上昇しています。
実質GDPは、名目GDPから市場価格の変化よる影響を取り除いて計算した数値です。こちらは、ベトナムの自国通貨で1990年に10,115,515.97ドンでしたが2022年には55,068,988.63ドンまで上昇しています。
またベトナム統計総局の発表によると、2022年7月~9月時点で実質GDPの成長率(推計値)は前年同期比で13.67%と高い数値を示しました。
最近の世界ランキング
国際通貨基金が示したデータを見る限り、2022年時点でベトナムの1人あたりの実質GDPは世界ランキング112位です。
上記データの場合、各国を比較する数値にはゲアリー=ケイミス・ドルの名で一般に広く知られる国際ドルが使われています。この基準にもとづくと、ベトナムの1人あたりの実質GDPは12,881ドルです。
また先の世界経済に関する情報サイトでは、USドルを用いた1人あたりの名目GDPが示されています。こちらは2021年のベトナムの数値が3,717.80ドルと計算され世界ランキングは126位です。
さらに既述の3,694ドルにもとづく2021年のランキングは117位であり、最近のベトナムにおける1人あたりのGDPは120位前後と理解できます。
ベトナムの生活水準
ベトナムの生活水準は、かつてに比べると全体的に上昇しました。ただ、居住地域などにより多少の所得差が生じています。
国内全体では上昇傾向
ベトナム統計総局が2021年に速報した報告書をふまえた場合、近年は国内全体の生活水準が上昇したと判断できます。
2020年における同報告の調査対象は、国内の4万6,995世帯です。具体的な調査項目は、収入および支出から人口統計・教育・健康・雇用・住居・耐久財や衛生などまで多岐にわたります。
今回の調査結果によると、1人あたりの月間平均所得は10年間で約3倍に増えました。2010年には139万ドンでしたが2020年で423万ドンに達し、年率の伸び幅は約11.9%になる計算です。
前年と比べた場合はコロナ禍の影響もあり2%ほど低下しますが、ここ10年を視野に入れれば生活レベルは大きく向上したと見られています。
ここ数年の課題
ここ数年、国内の生活水準についてベトナムが抱える課題は居住地域の違いなどから生じる所得差です。
所得階層別の数値に目を向けると、2020年時点で低所得層と高所得層の間には約8倍の開きがあります。2010年に記録した9倍以上の差異よりは縮小しましたが、大幅に改善されたとはいえない状況です。
とくに居住地域の違いに伴う所得差は、大きな問題になっています。2020年の調査結果に限れば1人あたりの月間平均所得は都市部で554万ドンであり、それに対し農村部は348万ドンと両地域の差異は約1.6倍です。
いずれも2010年頃から見れば3倍前後は伸びていますが、いまだに所得の地域差は大きいといわれています。
生活水準や食生活の変化
最近のベトナムは、依然として所得差の問題があるものの生活水準は明らかに向上しました。
いくつか具体的な変化を挙げると、飲料水の安全性、トイレの設備、電気へのアクセス状況などが改善されています。また、耐久財に関するデータも保有率が高まったことを示しました。
さらに食生活も肉やアルコール類の1人あたりの月間消費量が増え、これらの変化は国内全体の所得上昇がもたらしたと考えられています。
まとめ
近年、ベトナムにおける1人あたりのGDPは、世界ランキング120位前後です。数年来の調査によれば月間平均所得は上昇傾向にあり、結果として生活水準は向上したといわれています。そのため、まだ地域差は見られますが以前に比べると国内全体は暮らしやすくなったと考えられます。
参考サイト:
https://life.saisoncard.co.jp/money/wisemoney/post/gavel10/
https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/basic_01.html
https://ecodb.net/country/VN/imf_gdp2.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/10/fe0f0078452f4d38.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E4%B8%80%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A%E5%AE%9F%E8%B3%AAGDP%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/06/a8fdd777d36d258a.html