物価の安さと住み心地の良さから、日本人の旅行先として人気のベトナム。ロングステイした結果、その快適な暮らしから移住を決める日本人も少なくありません。
そんなベトナムですが、ここ数十年で産業構成比および主要産業に変化が生じていることをご存じでしょうか?今回は、意外と知られていないベトナムの産業や、日系企業との関わりについて解説します。
ベトナムの産業構成比
ベトナムの主要産業は「製造業(鉱工業・建築業)」「サービス産業」「農林水産業」の3つに分類されており、GDP(国内総生産)における各産業の割合は、ここ30年で急激に変化しています。
とりわけ際立つのが、農林水産業のGDP割合です。世界180カ国以上の経済データを閲覧できる「TheGlobalEconomy.com」によると、ベトナムの1988年における農林水産業の割合は、全体の約40%を占めていました。しかし、時代とともに製造業・サービス産業の割合が拡大。2016年には、農林水産業の割合が約30%まで減少しました。
製造業・サービス業は、1992年頃から右肩上がりで拡大し、2004年頃より横ばい傾向にあります。2010年頃にはGDP割合の約70%が製造業・サービス業となっており、ベトナムの産業構成比は、一次産業から二次産業へと明確にシフトしています。
出典:TheGlobalEconomy.com「Vietnam Economic Indicators
Download data」
https://www.theglobaleconomy.com/Vietnam/
ベトナムの産業とGPDランキング
GDPはその国の経済成長に関するさまざまな情報が得られる指標です。IMF(国際通貨基金)が公表した資料によると、ベトナムの2022年時点におけるGPDは約408(単位:百万USドル)でした。世界のGDPランキングでは39位となり、東南アジアの中では、シンガポールやフィリピンに次ぐ結果です。
発展途上国のイメージが強いベトナムですが、GDPだけ見ると、比較的上位にいることがわかります。その背景には、自国の主要産業における製造業・サービス業の目覚ましい発展・拡大があります。
ベトナムの産業割合に影響した「チャイナプラスワン」
ベトナムのGDPが拡大したきっかけの1つに、2000年初頭に提唱された「チャイナプラスワン」があります。チャイナプラスワンとは、これまで中国のみ構えてきた生産拠点を他のアジア諸国に展開することです。
ASEAN(東南アジア諸国連合)などの日系企業はこれまで、中国に自社製品の生産拠点を構えていました。特に自動車部品や電気部品を製造するエレクトロニクス産業は、安価で大量生産が可能な「中国頼み」の側面がありました。
しかし、近年の中国国内における人件費高騰や政治問題などにより、中国での生産メリットが減退しました。そこで、中国の代わりに人気の生産拠点となったのが、ベトナムをはじめとする東南アジア諸国です。
実際のところ、生産拠点を中国からベトナムに、本格的に移管し始めている企業は多数あります。有名なのが、「MacBook」や「iPhone」で知られる多国籍テクノロジー企業「Apple」社です。
外資系金融機関「JPモルガン」は、「Apple」社の純正ワイヤレスイヤホンである「AirPods」のベトナム生産が本格化したと発表。2025年までにベトナムでの生産比率は約65%まで工場すると分析しています。数年後、世界中に流通する「AirPods」のほとんどがベトナム製となる見込みです。
このように、「Apple」社のような巨大企業においても、ベトナム生産への投資を始めています。さらにベトナム国内のIT化も加速したため、外国企業によりオフショア開発も盛んです。今後、ベトナムの主要産業比における製造業・サービス業の割合は、さらに拡大すると予測されます。
出典:IMF「GDP, current prices」
https://www.imf.org/external/datamapper/NGDPD@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD/RUS/VNM
ベトナム産業と日系企業の関わり
製造業を中心に、ベトナムを生産拠点に据える日系企業は少なくありません。「JETRO(日本貿易振興機構)」が公表したデータによると、2022年10月現在、ベトナムに進出している日系企業は1,973社とのことです。これは現地の「ベトナム日本商工会議所」「ホーチミン日本商工会議所」「ダナン日本商工会議所」の会員数にもとづいた数値となります。
具体的な企業名ですが、精密機器メーカーの「キヤノン株式会社」や「パナソニック株式会社」をはじめ、自動車メーカーの「トヨタ自動車株式会社(TOYOTA)」「本田技研工業株式会社(HONDA)」といった大手が挙げられます。
ベトナムはエレクトロニクス産業や自動車製造業が盛んであり、自国における主要な二次産業でもあります。
なお、同データによると、日本の主要輸入品目は電気機器が最多であり、次いで衣類・同付属品、一般機械、木材と続きます。電気機器においては、品目別輸入割合の27.5%を占めています。こうした日系企業の関わりが、東南アジアトップクラスの実施GDP成長率を支えているものと考えられます。
まとめ
ベトナムはチャイナプラスワンの影響から、東南アジア随一の製造・生産拠点へと変わりました。第二次産業の割合が増加したことで、実質GDP成長率も継続的に成長。今後ますます、経済的な発展を遂げていくことでしょう。
参考:
https://keikakuhiroba-mfi.com/archives/24925#%E7%94%A3%E6%A5%AD%E6%A7%8B%E9%80%A0
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=38111
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_News/releases/2021/3ae53c9f535e9263/digest20210129.pdf
https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/basic_01.html