いま世界各地は、住民の暮らしやすさを追求するスマートシティの実現に力を注いでいます。ベトナムも例外でなく、この新たな手法で都市開発を推進すると公式に発表しました。各種の開発事業は外資系企業も参加可能であり、日本企業にとっても大きなビジネスチャンスになると見込まれます。そこで今回は、スマートシティの概要とともにベトナム国内の動きや日本企業が市場に参入できる可能性をご紹介します。
ベトナムも注目するスマートシティ
スマートシティは、住民の暮らしやすさを目指す新しい都市開発の概念です。最近は、経済発展が目覚ましいベトナムも注目しています。
スマートシティの概要
近年、世界各国で推進している街づくりの新手法がスマートシティです。これまでと異なり、最先端の通信技術(ICT)などを活かす特徴があります。
かつて、多くの都市計画はライフラインの設置や土地の区画整理を重んじる傾向が見られました。道路や建築物の配置が決まると、時間の経過とともに人々の生活スタイルが変わっても大半の都市は従来通りの姿を維持したままです。
それに対しスマートシティは、住民のニーズに合わせた柔軟性のある都市運営を重視します。その際、さまざまな価値観を把握するために用いられる手段がICTをはじめとする各種の先端技術です。
これらの特徴から、新しい都市開発の概念は急激な社会変化にも対応できる街づくりを実現してくれると期待されています。
世界各国の動き
数年来、世界各国はスマートシティの実現に積極的です。よく知られる具体例としては、米国や日本国内のケースが挙げられます。
米国の場合、ニューヨークの事例が比較的に有名です。現地では、古い公衆電話が高速インターネット対応のタブレット型情報端末に置き換えられました。米国内なら無料通話できるとともに、公衆Wi-Fiの無料利用も可能になっています。
日本国内の代表例は、神奈川県横浜市・福岡県北九州市・愛知県豊田市・京都府けいはんな学研都市です。これら4都市では、家庭用エネルギー管理システムの導入や電気自動車のシェアリングサービスを進めています。
他の都市や地域でも新方式の都市開発に対する関心は高く、今後、スマートシティの市場は世界的に広がるだろうとの見通しです。
ベトナムが目を向ける背景
いま、ベトナムがスマートシティに目を向ける大きな背景には、同国内での著しい経済発展があります。
昨今のベトナムは、経済面が安定的に成長を続けるなか各地で急速な都市開発が進行中です。ただ都市部では、建築ラッシュや交通量の増加とともに道路の渋滞や大気汚染が深刻化したといわれています。
これらの問題に対処するため、同国政府は従来の都市計画と異なるスマートシティに着目しました。さらなる経済成長と生活水準の向上を果たす目的のもと、ICTを活用した都市開発の構想を掲げています。
実際、2018年4月開催のASEAN首脳会議では、ハノイ・ホーチミン・ダナンの「ASEANスマートシティ・ネットワーク」への参加を表明しました。
日本企業が市場に参入する可能性
ベトナムがスマートシティに力を入れる動きは、日本企業にとって大きなビジネスチャンスと考えられています。具体的に参入可能と見られる分野は、土地開発や観光産業など多彩です。
ベトナム政府の方針
2018年8月、ベトナム政府はスマートシティ開発の指針を示すため首相決定として2030年までの方針を公布しました。
同決定は、「2018年から2025年までのベトナムの持続可能なスマートシティ開発計画および2030年までの方針」です。ここでは、ICTの活用による生活向上だけでなく都市行政や土地・エネルギー利用の効率化も目指しています。
公布当初に示された予定は、2020年までに法制度の整備を済ませ2025年までに3都市以上で新たな開発計画の試験運用を始める流れです。そのうえで2030年までに、それぞれの都市間における連携を考えています。
また中央政府は、建設省や情報通信省など8省が関わり基盤整備に取り組むと述べています。
日本企業の参入事例
これまでに日本企業がベトナムのスマートシティに参入した事例のひとつは、住友商事のケースです。
2018年6月、首都ハノイは住友商事の投資案件を認可しました。この案件が提示した内容は、ドンアイン区の開発です。開発範囲は272ha、投資額は約42億ドルが見込まれました。
当地区は、ノイバイ空港とハノイ市街をつなぐ幹線道路の沿線に位置します。同時に日系企業が多く入居する工業団地にも近く、ハノイの新しい都市鉄道建設も期待されていました。
2018年時点の第1期計画で73haを住宅開発する予定があり、住友商事は初期段階から参加する機会を得ます。
将来的な可能性
最近のベトナム情勢を見る限り、各地でスマートシティ実現の動きは活発です。そのため、日本にとどまらず外資系企業は強い関心を示しています。
ベトナム中部にあるダナンも、ヨーロッパやアジアから注目を集めている代表的な都市です。産業部門では、ロボットメーカーの企業が水質改善や汚水処理の事業参入を表明しました。
また北部のクアンニン省ハロン市は、観光業でICT活用を促進する計画です。実際、観光名所であるハロン湾の安全性や同分野の運営効率化に先端技術を導入すると発表しています。
以上の動向をふまえた場合、将来的に日本企業がベトナムのスマートシティに参入できる可能性は小さくないと考えられます。
まとめ
ここ数年、ベトナム国内はスマートシティに積極的な姿勢です。2018年以降は、最新の通信技術などを用いた開発事業が各地の都市で進んでいます。この動きは今後も続く可能性が高く、日本企業も十分に参入可能と期待できます。
参考サイト;
https://www.pro.logitec.co.jp/houjin/usernavigation/hddssd/20200904/index.html
https://wisdom.nec.com/ja/feature/smartcity/2021011501/index.html?cid=wis_ana_yss-das_proactive&yclid=YSS.1001162652.EAIaIQobChMI0s7isYCb-wIVlGOLCh1hlQxrEAAYBCAAEgJqAvD_BwE