日本では毎年10月1日に最低賃金の改定が実施されます。ベトナムでも同様に、決まった時期に最低賃金の見直しが行われます。ベトナムで働きたい人や、ベトナムで労働者を雇用したい企業は、最低賃金についての決まりを確かめておきましょう。今回は、2022年に改定されたベトナムの最低賃金額や、関連する規定、金額の推移などをご紹介します。
ベトナムの通貨や為替レートについて
ベトナムの通貨はドン(Dong、VND)で、2022年9月現在は1ドンあたり約0.006円に換算されます。日本と比較すると物価が安く、出費を抑えながら生活することができます。
紙幣の流通が中心で、硬貨はほとんど使われることがありません。USドルも使用できますが、制限によって流通の機会が減っています。そのため、ベトナムにおける金銭のやり取りは、基本的にドンを使用することになるでしょう。
ベトナムの最低賃金に関する決まり
ベトナムの最低賃金は、国家賃金評議会(NWC)による審議が行われたうえで決定します。評議会に属するのは「労働傷病兵社会省(MOLISA)」「ベトナム商工連盟(VCCI)」「ベトナム労働総同盟(VGCL)」などの代表者です。加えて、2021年からは社会経済の専門家が参加することとなりました。
最低賃金改定の時期
ベトナムでは、ほとんど毎年のように最低賃金の改定が行われてきました。金額は12月頃に決定され、年明けの1月1日から反映されます。
ただし、2021年は新型コロナウイルス流行の影響もあり、最低賃金改定は実施されませんでした。通常よりも期間が空いたものの、2022年7月1日から最新の賃金が適用されることとなりました。
最低賃金に関する4地域の区分
ベトナムの最低賃金は以下の4つの地域ごとに決められています。
- 地域1:ハノイ市やホーチミン市、ハイフォン市などの各区、主要な県など
- 地域2:地域1に含まれないハノイ市やホーチミン市、ハイフォン市などの県、その他の省など
- 地域3:省に直属する市や、その他の省など
- 地域4:地域1~3に含まれない地域
大まかに分けると、地域1は都市部、地域2は都市部の郊外や主要な地方都市、地域3は地方都市、地域4は農村部などのエリアとなります。最低賃金は、その地域で活動しているに適用されます。
7%の上乗せ規定
ベトナムの法律上、訓練を受けた労働者には、最低賃金に7%以上を上乗せした給料を支払わなければいけませんでした。この場合の「訓練」には、社内での研修も含まれます。そのため、実質的な最低賃金は、7%上乗せした金額と考えられていました。
2022年から、この上乗せ規定が撤廃されました。地域別の最低賃金が表記通りに支払われるのであれば問題ありません。ただ、これまで上乗せされた給与をもらっていた労働者に対して、一方的な賃金の引き下げを行うのは避けるべきとされています。
ベトナムの地域別最低賃金推移
上記の通り、2022年7月1日、2年半ぶりに最低賃金が改定されました。以下の表で確認してみましょう。
2022年7月1日施行の最低賃金
|
賃金(月額) |
賃金(時給) |
日本円換算(月額)(※注) |
地域1 |
468万ドン |
2万2,500ドン |
約2万7,987円 |
地域2 |
416万ドン |
2万ドン |
約2万4,877円 |
地域3 |
364万ドン |
1万7,500ドン |
約2万1,767円 |
地域4 |
325万ドン |
1万5,600ドン |
約1万9,435円 |
改定前の金額と比較すると、全地域でおよそ6%の引き上げとなります。また、これまでは月ごとの最低賃金のみが定められていましたが、今回分から時間単位での最低賃金も設定されるようになりました。
(注)……1ドンあたり0.006円(2022年9月2日)
2022年までの最低賃金の推移
|
2018年 |
2019年 |
2020年 |
2022年 |
地域1 |
398万ドン |
418万ドン |
442万ドン |
468万ドン |
地域2 |
353万ドン |
371万ドン |
392万ドン |
416万ドン |
地域3 |
309万ドン |
325万ドン |
343万ドン |
364万ドン |
地域4 |
276万ドン |
292万ドン |
307万ドン |
325万ドン |
2018年から2022年までの最低賃金は、上記のように推移してきました。それぞれ5~6%の上昇率を維持しています。
ただし、かつての状況と比較すると、上昇率は低下しています。2013年は17.4%、2014年は15.3%と、現在よりも高い上昇率で推移していました。
ベトナムの公務員の基準賃金
ベトナムの公務員には基準賃金と呼ばれる最低賃金が規定されています。この金額は一律で、どこの地域であっても変わりません。
公務員の基準賃金は2019年の改定以降、据え置きとなっています。金額は月あたり149万ドンです。2022年の地域1の最低賃金が468万ドン、地域4でも325万ドンであることを考えると、公務員の賃金水準は低いといえるでしょう。
まとめ
ベトナムの最低賃金は4つの地域別に異なります。都市部ほど高額である点は日本と変わりません。
例年とは異なる時期であるものの、2022年7月には約6%の最低賃金アップが実施されました。金額のほかにも、さまざまな規定が変更されています。今後の賃金改定はどうなるのか、最新の動向をしっかりとチェックしていきましょう。
参考
https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2022/07/vietnam_01.html#link_01
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/06/efaa20cea27054df.html
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/01/9e1df70d300ee641.html
https://www.veltra.com/jp/yokka/article/vietnam-currency/
https://www.arukikata.co.jp/country/VN/info/currency.html
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/vn/invest_05/pdfs/vn10C020_minimum_wage.pdf
https://rakko.tools/tools/3/
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/hr-data/jp/about-labor/vietnam/
https://www.miraic.jp/online/8tips/category/tip06/2516.html